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組織発展を質問型営業でどう叶えたか?

8年間で従業員数が10倍に成長し、売上も右肩上がり! その原動力こそ「質問型営業だった」と語るのは、社会保険労務士法人ロームの牧野剛代表。青木毅との出会いによって、価格に甘んじず価値で競争をする決意、そして営業にパート従業員を活用するといった斬新なアイデアの数々が生まれたそうです。今や全国各地に事務所を構える同社の成長物語をご紹介します。

誰でも身に付く「シンプル」さが魅力

牧野先生が初めて質問型営業のセミナーに来てくださったのは2016年。当時10名程度だった従業員が、8年間経った今では100名近くまで増えて、大きな事務所に発展していますね!
ありがとうございます。そのきっかけであり、組織発展の要となったのが、青木先生に教わった質問型営業です。
大いに役立てていただけて嬉しいです。そもそも、セミナーに足を運んでくださった理由は何だったのでしょう? 質問型営業との出会いは?
セミナーに参加する前、青木先生の書籍を見つけたのが最初です。当時の私は喋ってばかりの説明型営業だったのもですから、質問型という手法に衝撃を受け、非常に興味をもちました。しばらく書籍で勉強し、それから1年後にセミナーを受けたのですが、そこでますます「これは良い!」と確信しました。
そう感じていただける牧野先生の感性も素晴らしいと思うのですが、どこを「良い」と感じていただけましたか?
いちばん良いと思ったのは、とてもシンプルだったことです。まずお客様の悩みに耳を傾け、どういうことを望み、どう解決していきたいかを聞くだけなのです。「この基本形を自由自在に活用すればいいんだ」と、すぐにイメージを掴めました。また、実際にロープレを見せていただけたことも大きかったと思います。
確か、保険営業を想定したロープレでしたね。参加者の方と私でやりとりを実践して見せた……
それです。参加者の方は説明から入ったのに対して、青木先生は「今日はどうして来られたんですか?」「大切な人への保障とは何だと思いますか?」という質問をしていかれたんです。すると相手の思いが次々に引き出されて、あっという間に売れてしまったんです! 説明なんていっさいせず、質問を5~6個しただけでクロージングまで終わってしまって。それを目の当たりにしたとき、本当に突き詰めると「営業トークは50文字くらいでまとまるのではないか?」と思ったほどです。やはりシンプルで、だからこそ真似しやすいと思いました。

パートさんが「組織改革」の要に!

セミナーの後、私の直接指導まで受講していただきましたが、牧野先生は質問型営業をどう役立てたいと思っていたのでしょうか?
実は当時、いろいろなことに困っていたんです。大きな悩みごとの一つが、〈価格競争〉に巻き込まれていたこと。当社はパート従業員中心の経営をしていましたので、説明型の営業をして安く売るという価格競争力で勝負していました。パートさん2名を1名分の人件費で賄える分、価格を落とすことができたんですよね。ただ、その影響で労働環境は良いとは言えず、人材を募集しても集まりにくくなってきたという肌感がありました。この壁を突破してサービスを高く売るために、質問型営業が不可欠だと思いました。
そのためにもお勧めしたのが、御社の〈ミッション〉をつくることでした。営業をする以前に、企業として世の中に提供する価値を再確認してもらう作業です。
はい。人と組織を活性化するノウハウを学び、実践し、普及するという思いから「日本を人事労務で元気にする」というミッションが生まれたとき、価格ではなく価値で勝負する自信が付いた気がします。その実現のためには、私や従業員一人ひとりではなく、チームでコミットしていくべきだという考え方にもなりました。
素晴らしいですね! それから、価格競争のほかにもお悩みがあったんですよね?
そうなんです。パート従業員の方から「正社員になりたい」という相談がありまして。12名中5名がパートから正社員への昇格を望んでいました。全員の希望を叶えてあげたいところですが、そうすると4~5倍にまで膨らむ人件費を賄える仕事がありません。そこで思いついたのが、「パートさんにも営業をしてもらおう」という戦略でした。
なかなか面白いことを考えましたね。自分で自分の仕事を獲得してもらおうという訳ですか?!
その通りです。そう言えたのは、その頃、まだ習い始めたばかりの私自身が実践してみて、上手くいくと確信していたからです。これならパートさんでもできると思い、「一緒に質問型営業を学んで、仕事を取ってきてくれませんか? そうすれば正社員に登用できます」と打診。パートさんたちもこれに応じてくれました。

独自にアレンジした教育法



牧野先生は、ご自身で従業員の方に質問型営業を教えたわけですが、その時に工夫されたことをお聞きしたいです。
質問型営業では〈質問〉と〈共感〉が大切ですよね? 後々気付いたのですが、幸いにも当社には共感の上手い社員が多かったんです。特に女性たちは相手への共感が上手。ただし、苦手なこともありまして。相手からのレスポンスが遅いと沈黙に耐えられず、説明し始めてしまうんです。そこで、私は〈質問〉〈沈黙〉〈共感〉という順番にアレンジを加えて教えたんです。すると〈沈黙〉の間に待つ意識ができてきて、みるみる上達していきました。
面白い! よくその特性に気付きましたね。上手くアレンジを加えていると思います。
ありがとうございます。それから〈振り返り〉のやり方も工夫しました。従業員同士でペアをつくり、互いに振り返りをし合えるシステムをつくったんです。青木先生の〈振り返りシート〉にある項目を片方が質問し、片方が答えるのですが、そのやりとりが〈質問〉〈沈黙〉〈共感〉の訓練にもなるので、営業の練習にもなる。振り返りをしながらロープレをしている感覚です。
これも面白い。1on1の感覚で振り返りとロープレを兼ねるという、素晴らしい手法だと思います。パートの方々が、実際に営業を始めて契約を取るまでにどれくらいの時間がかかりましたか?
「すぐ」です! 本当に開始直後から。青木先生に指導していただいた〈トークスクリプト〉も準備できていたので、その通りにテレアポから初めてもらったら、すんなり上手くいったんです。笑顔で「営業行ってきます!」という姿が早々に見られるようになりました。
テレアポから上手くいって、最近までパートさんだった方が経営者と面談してすぐに案件を取ってくる?!……驚きですね。そんなスムーズなこと、あるんでしょうか(笑)
あるんです(笑)。実はもう一つ、工夫したことがありまして。1人ではなかなか営業しづらいと思い、営業にもペアで行ってもらいました。パートさんに提示した条件が、契約が取れてから正社員に登用するものだったので、パートさん2人組で1人分の人件費だと考えたからです。またテレアポをするときも、時間をきめて一斉に取り組むようにしました。そうすれば、みんなが頑張っている声が聞こえるので、心強いと思いませんか?
おっしゃる通りですね。質問型営業をいかに組織に落とし込んだかが、手に取るように分かりました。よく“トップが矢継ぎ早に営業を取ってきて現場が疲弊する”という現象が起きますが、御社はまったく逆ですね。

マーケティングにも成功、支店拡大へ

さて、「価格競争からの脱却」という課題があったわけですが、その後、どうなりましたか?
当時から現在までに、3度の値上げに成功しました。質問型営業のおかげです。やってみて気づいたのは、こちらが「お願い」して商品を売っている間は、価格競争から逃れられないということ。お客様の意見やニーズを無視して売るなら、安さで売るしかないのです。ところが、お客様の悩み、現状、欲求、ニーズを聞くと、その解決のために見合った料金で相手が納得してくださるんです。
質問型営業を、完璧にインストールしていますね。営業が上手くいくと、組織づくりにも良い影響が波及しますよね?
そうなんです。何より労働条件が良くなりました。特に正社員には、売上が増えたら経常利益の3割をボーナスにすると約束していたんですが、それをモチベーションに全員が頑張ってくれて、ボーナスだけではなく給料も右肩上がりになっていきました。今、世間ではDXによる業務効率化が推進されていますが、我が社では〈質問型営業〉がその要となってくれました。それから、質問型営業をすればするほど、マーケティングに繋がったことも相乗効果の一つです。



マーケティングに挫折して、質問型営業を学ぶ。すると営業がそのままマーケティングになったという効果は多くの経営者の方から寄せられています。
質問型営業でお客様の欲求・ニーズを聞くと、どういう人が悩んでいるのか、どんな風に解決したいと思っているのかが手に取るように分かってきます。実例が蓄積されていき、その中に共通点が見つかってくるからです。広告やホームページでもその共通点を訴求すると反応が良くなり、飛び込み営業も必要なくなります。我々は、お客様のニーズに対する解決策を商品化すれば良いだけ。それを繰り返していくと、価格に頼らずとも他社と圧倒的に差が付くのです。
つまり、営業をしている間に自然とマーケティングまでできてしまうんですよね。御社の場合、それが支店拡大にも繋がっていきましたね。
ありがとうございます。支店を拡大できたのは、組織に質問型営業が根付いたおかげです。 会社のPRにYouTubeを活用しているのですが、その内容も質問型営業がベースになっています。実際にあったお客様のお悩みからその解決方法までを、守秘義務に反しないレベルで番組化しているんです。現在までに400本ほど公開しており、20万回再生されたものもあります。
そこまで活用いただけると、完璧ですね! 牧野先生は、お客様の課題解決にマインドマップを取り入れていていますよね。お役立ちの心が現れた素晴らしい取り組みだと思いました。
ありがとうございます。マインドマップは、お客様の欲求やこちらの提案、実際の取り組み状況を全て書き込だものです。こちらの〈質問〉とお客様の〈思い〉を見える化したもので、商談が終わったときにプレゼントすると、とても喜んでいただけます。時間の経過とともに、話した内容は忘れがちですよね? ですが、とても大切なことなので、将来のお役に立てていただくために残してさしあげようと思いました。
……もう、私がアドバイスすることは何もありません(笑)
いえいえ(笑)。書籍やセミナーが入り口でしたが、私は青木先生の直接指導を受けてとても良かったと感じています。声の出し方や間の取り方など、書籍には載っていないことを学べますし、実践してみるとそこがかなり重要なポイントだと思いました。トークスクリプトの作成も伴走してもらえましたし。そこまでしてもし「質問型営業が身に付かなかった」と言う人がいるなら、それは練習量が少ないからではないでしょうか。私や当社の従業員たちのように、口に出して繰り返し、繰り返しトレーニングすれば必ず習得できます!

社会保険労務士法人ローム
牧野 剛 代表

静岡県浜松市で1991年に事務所を開業。2007年に「ROUM」の代表に就任。独自のコンサルティング力を強みに、上場企業を含む700社以上の企業労務をサポートしている。現在は地元の静岡県内にとどまらず東京、福岡、仙台にも拠点を拡大。質問型営業をきっかけとした組織改革が実り静岡県知事から「子育てに優しい企業」の表彰を受けたほか、「ワークライフバランス推進静岡県モデル事業」にも認定。

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